Black-crowned Night Heron
Nycticorax nycticorax
標本情報
個体No.1
回収時の状況
食痕
採取地
神奈川県相模原市緑区
測定値[mm]
初列風切:230(P9) – 238(P8)
次列風切:166 – 183
三列風切:-
尾羽:-
※欠損の無い羽のみを計測
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夜遊びのしすぎで目が赤く充血していると言われているゴイサギ君です。
実際、主に活動するのは夜と言われていて、昼に見かけるのはヨシ原などで休んでいる事が多いです。管理人の住む地域の水田地帯では、夕方になるとゴイサギが飛び始めるのをよく見かける事があります。ゴイサギの出勤ですね。
幼い頃の羽衣は、俗にホシゴイと呼ばれる斑点模様で、頭から背中の紺色はありません。
斑点模様の羽衣は第一回夏羽(2年目の夏)までで、その後はほぼ成鳥と同じ様な羽衣に移行し、第三回冬羽で完全な成鳥となります。
よく観察すると、斑点は各羽の先端にだけ入っている事が分かりますね。
さて、羽標本を見てみましょう。こちらは斑点は無く、成鳥の羽という事になります。
まず、羽の大きさに目が行きます。初列風切で20cm前後です。羽標本の台紙(A3)に納めるのに大変苦労しました。ちなみに、似た様な羽でアオサギのものになると、30cm前後となります。(拾ったらどうしよ〜!)
個体No.1の羽標本の次列風切は15枚あります。野鳥の羽ハンドブックによると、次列風切は全18枚となっており、残念ながらフルコンプならず。
ちょっと脱線しますが、この野鳥の羽ハンドブックは、拾う機会の多い鳥に絞って羽が掲載されているので、とても使いやすいです。もし羽の図鑑をまだ持っていない方がいれば是非どうぞ。(ここの所、在庫が安定していないようなので、中古しかない可能性もあります。)
長さや湾曲を見ながら順番に並べていますが、必ずしも順番通りになっていないかもしれません。
また次列風切としている羽で、後ろの方はもしかすると三列風切かもしれません。ゴイサギの三列風切の情報は見つけられず、確定が難しいです。
逆に言うと、これだけ羽の数が揃っているゴイサギの羽標本は珍しいのかもしれません(エッヘン!)。
風切は全体的にグレーですが、外弁を良く観察すると薄らと水色っぽく見えます。
初列風切の7番目から10番目までは、羽の切れ込み部分である「欠刻」がはっきり見て取れますね。
実は、この欠刻が翼の先端が分かれて見える「翼先分離」を生んでいます。
翼先分離はワシ・タカ類の識別で良く使われますね。「翼先分離が5本だからツミ!」とか。
同じサギ類のコサギと比べてみましょう。
初列風切の8番目と思われる羽での比較です。色は全然違いますが、大きさと形はよく似ていますね。(コサギは羽柄(軸の下の方)が欠損しています。)
山渓ハンディ図鑑7 新版日本の野鳥によると、生体の全長はゴイサギ:57cm、コサギ:61cmとあり、羽の大きさと体の大きさも似た様な感じの様です。
因みに、この山渓ハンディ図鑑7 新版日本の野鳥は、日本で見られる多くの鳥(520種)が掲載されています。その全てが写真での掲載というのがとにかく良いです。自分の記憶や写真と見比べて、間違いの無い識別が出来ますので、とてもお勧めです。もし写真図鑑をまだお持ちでなければ是非どうぞ。
この標本は、何者かがゴイサギを食べた痕に残された羽(食痕)で作りましたが、一体誰が食べたのでしょうか?羽柄が欠損しているものが多いので、犯人は猛禽で無く哺乳類かと思われます。猛禽は羽を壊す事なく、もっと上手に抜くのです。
しかし、こんな大きな鳥を食べる哺乳類って?まさか猫には無理ですよね。タヌキかな?それとも野犬?気になる所です。
羽のバックヤードは手軽なweb羽図鑑になれる様、日々活動しています。
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参考ページ
参考文献
- 原寸大写真図鑑 羽 増補改訂版、叶内拓哉・高田勝、文一総合出版
- 野鳥の羽ハンドブック、高田勝・叶内拓哉、文一総合出版
- 山渓ハンディ図鑑7 新版日本の野鳥、叶内拓哉・安部直哉・上田秀雄、山と渓谷社
- フィールド図鑑 日本の野鳥 第2版、水谷高英、文一総合出版
- 日本の鳥類と其生態 第二巻、侯爵 山階芳麿、梓書房・岩波書店
- 鳥のフィールドサイン観察ガイド、箕輪義隆、文一総合出版
当サイトの参考文献一覧はこちらからどうぞ。
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