【ブックレビュー】羽根識別マニュアル【羽図鑑:藤井幹 文一総合出版】

羽根識別マニュアル

待望の羽図鑑がリリースされました。

しかも、著者は羽業界の権威、藤井幹さんです。

藤井さんと言えば、『動物遺物学の世界へようこそ!~獣毛・羽根・鳥骨編~』が羽業界ではバイブルになっていますが、絶版になって久しく、入手がかなり困難な状況です。

(おそらく中古市場にもほぼ出回っていないかと・・・)

 

『動物遺物学の世界へようこそ!~獣毛・羽根・鳥骨編~』は羽の識別方法に重きを置いたものでした。

私もこの本を読み込んで、羽の見方を藤井さんから(勝手に)学んだという風に思っています。

本書は、そんな『動物遺物学の世界へようこそ!~獣毛・羽根・鳥骨編~』の続編というか、強力にバージョンアップした羽図鑑となっています。

 

このサイトで取り上げない訳には行かない本ですので、はりきってご紹介したいと思います。

収録内容(目次)

  • はじめに・本書の構造
  • 羽根の構造と種類

第Ⅰ章:特徴から検索する

  • “市街地”で見つかる羽根
  • 羽根の”特徴別”検索
  • “形”に特徴がある羽根
  • “色”に特徴がある羽根
  • 特徴的な模様の”風切羽”
  • 特徴的な模様の”尾羽”
  • カモ類の”翼鏡”
  • “鷹斑模様”のある尾羽

第Ⅱ章:羽図鑑

国内で記録のある鳥24目81科のうち、いくつかを除いた上に外来種を加え、25目79科を収録。

第Ⅲ章:ミクロの世界で識別する

  • 顕微鏡で羽を見て識別する
  • 小羽枝検索チャート
  • 索引
  • あとがき・参考文献

コラム

  • 羽と羽根
  • 後頭部の怪しい羽根
  • 羽根の識別に役立つ部位の名称①(光沢弁・細毛を持つ羽根・鷹斑模様・翼鏡)
  • 羽根の識別に役立つ部位の名称②(後羽)
  • オオルリの以上な羽根
  • 整体で変わる構造

 

B5サイズ。オールカラー、全223ページ。

著者「藤井幹」のプロフィール

※amazon著者紹介欄より引用

1970年,広島県生まれ。

公益財団法人日本鳥類保護連盟に所属し調査研究室室長としてワカケホンセイインコの分布状況調査やコアジサシの研究などを行っている。

羽根には学生のころから魅せられて収集に明け暮れていたが,収集だけでなく識別点にもこだわって取りまとめてきた。

著書に『動物遺物学の世界へようこそ!~獣毛・羽根・鳥骨編~』(共著,里の生き物研究会),『世界の美しき鳥の羽根 鳥たちが成し遂げてきた進化が見える』(誠文堂新光社),『野鳥が集まる庭をつくろう―お家でバードウオッチング』(共著,誠文堂新光社)

 

書籍フォーマット

当初は紙の本だけの刊行でしたが、現在(2021年5月時点)は電子書籍も発売されています。

価格は電子書籍の方がお買い得のようですね。

私は紙の図鑑の方が好きですが、ここはお好みで選んでください(^^;)

 

ブックレビュー

それでは、軽い書評をしながら、ブックレビューしますね。

 

鳥が好きでバードウォッチングをしていると、どこかで必ず羽を拾うと思います。その時にまず最初に思うのは、「誰の羽だろう?」だと思います。

そんな「羽の落とし主を突き止めたい」という思いをマニュアル的に説明されているのが本書です。

羽の図鑑と言えば既刊の原寸大写真図鑑 羽 増補改訂版野鳥の羽ハンドブック決定版 日本の野鳥 羽根図鑑がありますが、どれもカタログ的で、識別の為にはひたすら絵合わせをして行く必要があります。

(これはこれでとても楽しい作業。全く否定はしませんが・・・)

本書は羽の識別に至るプロセスをフローチャート化して、種を飛び越えて似た見た目の羽を比較し、その羽の種を識別しようという試みがされているのが大きな特徴です。

そのフローチャートは、日本でもトップクラスの羽の権威である著者の頭の中を形式化したもの。

超一流の羽の専門家の頭の中をインストールできる図鑑ですので、羽に興味のある方には本気でおすすめの一冊です(笑)。

 

本書は3章構成になっています。

 

第1章 羽の検索フローチャート

第1章は、羽の検索フローチャート。

拾った羽の見た目から似た種を比較しながら識別していく試みです。

これは既に絶版となっている前著『動物遺物学の世界へようこそ!~獣毛・羽根・鳥骨編~』でも説明されていましたが、収録種が増えたり、写真が鮮明になったりと、さらに見やすく強化されています。

おそらく本書の最大の見所ではないかと思います。

青い色の羽の識別フローチャート。色で並んでいるのが検索性を高めてくれる。

 

第2章 羽図鑑

第2章は羽図鑑です。

各種の羽が写真で掲載されています。

掲載部位は書面の都合で代表的な部位にとどまっていますが、コンパクトにまとまっていて、網羅的に掲載されている原寸大写真図鑑 羽 増補改訂版よりも検索しやすいものになっているかと思います。

価格も比較的リーズナブルですので、単に羽図鑑が欲しいという方にでも、自信を持っておすすめできます。

ただ羽が並んでいるだけでなく、似たような羽は科を超えて比較されているのが嬉しいポイント。

 

第3章 顕微鏡を用いた体羽の識別

第3章は顕微鏡を使って、いつもスルーしがちな体羽を識別しようという試みです。

これは他にはないユニークな視点です。

顕微鏡を使って体羽の下の方の小羽枝を観察する事で、科までの識別が可能。

必要なものは一般の顕微鏡でOK。

これを読んで顕微鏡が欲しくなったー!

羽って拡大するとこんな感じに見えます。ただのフサフサでは無い。

 

その他、コラムや羽図鑑の中の「似た種のまとめ」的な記事もとても参考になります。

実はこの図鑑のお陰で、羽標本にしながらも長年の間、種不明としていた羽がついに判明しました。

こんな感じで、羽を得意でやっている私でも、この図鑑から得られる情報はとても有意義で、大活用させて頂いています。

 

まとめ

ただでさえ情報の少ない羽業界。待望の新刊が出たのがとにかく嬉しいです。

いま現在(2020年11月)で、気軽に買える羽の図鑑は実質この1冊だけとも言えます。

 

鳥や羽に興味があれば、持っていて損のない本です。

この本を手にされて、1人でも多くの羽ファンが増えることを切に願っております。

 

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