【ブックレビュー】神奈川の鳥 2011-15【神奈川県鳥類目録Ⅶ】

神奈川の鳥_2011-2015_神奈川県鳥類目録Ⅶペーパーバック版

我が神奈川県で観察された野鳥の観察記録がまとめられた、神奈川県鳥類目録の2011-15年版が発行されました。

発行者は日本野鳥の会神奈川支部です。

この鳥類目録は、1986年から5年間隔で刊行されており、今回が第7巻。7年ぶりの発行となります。

この目録、これまでは本屋などには売って無く、神奈川支部会員でないと欲しくても買いづらい状況でしたが、今回からAmazonで取り扱いが始まり、手に入れやすくなりました。相変わらず本屋にはありませんが、時代に合わせた対応をされていて素晴らしいです。

とっても分厚いペーパーバック版を手にしましたので、内容の紹介と簡単な書評をしていきます。

収録内容(目次)

1. 鳥類目録編集の経緯(P.1〜)
2. 最近の神奈川県の鳥類の動向について(P.5〜)
3. 鳥類目録(在来種・帰化種)(P.11〜)
4. 逸脱種(野外で観察された記録の少ない外国産の鳥)(P.631〜)
5. 参考記録(P.636〜)
6. 行動別索引(P.640〜)
7. みんなでつくろう鳥類目録(P.661〜)
8. 本目録の利用と引用について(P.665〜)
9. 参考文献(P.667〜)
10. 協力者・スタッフ一覧(P.678〜)

著者「日本野鳥の会 神奈川支部」のプロフィール

日本野鳥の会は中西悟堂先生の「野の鳥は野に」という主張をバックボーンに1934年に結成。

その理念は次のようにまとめられています。

日本野鳥の会は、自然を尊び守り賢明に利用することが人類の存続と幸福にとって不可欠であるとの認識にたち、野鳥を通して自然に親しみ自然を守る運動を、社会の信頼を得て発展させることによって、自然と人間が共存する豊かな環境をつくることに貢献する。
(「日本野鳥の会の理念と活動」1992による)

神奈川支部は、1952年に横浜支部の名で、全国11番目の支部として誕生。その後、神奈川支部と名を改め、事務所を持ったのは1976年のことです。

(参考:日本野鳥の会 神奈川支部HP

会員数は2020年8月時点で1700名余り。運営はすべてボランティアで行われています。今回の目録作成もボランティア活動で出版されています。全686ページという圧巻のボリュームも見ると、血がにじむような努力があったのだろうと思います。

書籍フォーマット

フォーマットは3種類です。

・Kidle版
・ペーバーバック版(普通の紙の本)
・CD版(Kindleの内容がpdfファイルで収録。限定50枚)

私はペーパーバック版を買いました。Kindle版ペーパーバック版はAmazonで購入可能です。

Kindle unlimited対象なので、サブスクリプションされている方は、追加料金無しで読めます。(Kindle unlimitedの対象かどうかは、執筆時:2020年8月27日現在の情報です。最新情報はAmazonの販売サイト内でご確認下さい。)

 

ブックレビュー

本の概要を書きながら、簡単に書評を書いていきますね。

神奈川県で記録された476種について記載。各種類毎に以下の情報が書かれています。

・種の解説
・月別の記録件数
・1986年からの年代ごとの観察頻度の推移
・県内各地域での観察分布
・観察内容

共起ネットワーク

今回からの初の試みのようです。
共起ネットワーク
観察記録件数上位5種(ヒヨドリ、スズメ、シジュウカラ、ハシブトガラス、ムクドリ)の共起ネットワークが掲載されています。
ヒヨドリで言えば、密接な関係にいる言葉(行動)は「飛ぶ」と「鳴く」だと言うことがわかります。そして、「蜜」や「吸う」は3月、4月が多い。花が咲くのは春だけじゃないのに、ヒヨドリが花蜜を吸っているのは春がメインだと言うことが、データから見て取れました。
そういえば、ミズキやニセアカシア、ヤマボウシ、ネムノキの様な、暑くなってきてから咲く花にヒヨドリが吸蜜している場面は見たこと無いかも。
春の花は鳥に依存しているものが多くて、夏の花は虫依存が多い。夏の方が虫が多いから、生物のサイクルからしてもそうなのかも知れません(あくまで思いつき仮説です)。
そんな気づきを与えてくれる共起ネットワークでした。
ちなみに共起ネットワークの見方はこのページが参考になります。

観察記録

神奈川県で観察された476種類が公式記録が目録として掲載されています。
パラパラとめくってて目に止まったのが、リュウキュウヨシゴイ。まさかです。いたんですね。2012年に平塚市で初記録とされています。
リュウキュウヨシゴイは、南西諸島の留鳥なので、なにかの気の迷いで来てしまったのですね。だいぶ遠いですよ。その後が気になってしまいます。
その他、シマクイナ、サルハマシギ、ブッポウソウ、ヤツガシラなど。珍鳥系の記録も結構あります。神奈川県でも注目して探すと様々な鳥に出会えることが分かりました。
なにせ神奈川県で476種類ですからね。日本鳥類目録第7版の種数が633種なので、国内の鳥類の75%が神奈川県で記録されていることが分かります。神奈川県、結構すごいです。

観察内容

個人的におすすめなのは、この観察内容ですね。難しい事抜きで、一番面白いです。

神奈川の鳥_2011-2015_神奈川県鳥類目録Ⅶペーパーバック版

 

どういう事が書いてあるか、ヤマガラの項を抜粋すると、

ケヤキで鳴いていたアブラゼミを横からもぎ取るように片足だけで掴み、カエデの横枝に移るがセミも暴れて落としてしまうもすぐに追いかけ捕まえるを3度繰り返し、4度目で腹を上にしてつかみ食べ始める。

とあります。

臨場感溢れる観察記録もさる事ながら、ヤマガラがセミを食べるなんて想像もしていませんでした。ヤマガラといえばエゴノキの実を食べる事が有名で、あまり虫を食べるイメージが無い。食べたとしても芋虫や小さな蛾や甲虫程度かと、勝手なイメージがありました。

そんな固定観念を打ち崩す観察記録が、事実として書かれており、これまでの野鳥に対するステレオタイプなイメージを改めないといけないと思いました。

この本を読んで、「鳥を見つけたら行動をよく見ないといけない」と心に決めました次第です(笑)。

この本は野鳥の生態を知る上で大変参考になります。これは神奈川県に限らず利用できますので、県外のバードウォッチャーの方にもおすすめします。

 

その他情報

本書の観察内容は抜粋版の記録のみですが、付録として観察データの全てが記録されたエクセルファイルが神奈川支部のHPからダウンロードできます。研究される方にとってはとても扱い易い貴重な研究データになるかと思います。

ちなみにペーパーバック版は、A4サイズで全686ページ。厚さ4.2cm、重さ1.9kgでした。電話帳ぐらいです(笑)。

神奈川の鳥_2011-2015_神奈川県鳥類目録Ⅶペーパーバック版

ずっしりとした所有感が得られますよ!

買い方

書店での取り扱いは無く、Amazonで購入のみの取り扱いです。楽天ブックスなどでも取り扱いは無いので、ご興味ある方は、以下から探してください。

ペーパーバック版は4400円ですが、Kindle版は1200円と超お買い得です。(価格は執筆時:2020年8月27日現在の情報です。最新情報はAmazonの販売サイト内でご確認下さい。)

 

Kindleと同じ内容(PDF)が収録されたCD版は、数量限定発売です。神奈川支部へ直接メールで購入できます。Kindle端末は持ってないが、PDFが良いという方は在庫のあるうちにこちらのリンクからどうぞ。

日本野鳥の会 神奈川支部 β
神奈川の鳥 2011-15    ―神奈川県鳥類目録Ⅶ― 今回の鳥類目録7集は電子書籍としての出版ですが、従来のような紙の本も準備いたしました。以下に購入方法などをお知らせいたします。 1)Amazon の Kindle 版 (定価:1,20...

まとめ

今回は、7年ぶりに刊行された、神奈川県鳥類目録について書評を書きました。いかがだったでしょうか。

2019年の日本鳥学会で黒田賞を受賞された吉川徹朗さん(国立研究所)は、実際にこの神奈川県鳥類目録のデータを用いて研究をされています。

神奈川でバードウォッチングをされている方はもとより、それ以外の地域でもとても参考になる生態情報が、てんこ盛りです。ページ数も686ページと凄いです!

普通の野鳥図鑑には無い生態情報が欲しい、脱初心者のバードウォッチャーや、年代別の推移に興味がある自然保護活動をされている方、野鳥研究をされている方には特におすすめです。

野鳥が好きで、それなりに知識がある方や、もっとレベルアップがしたい方にも、手元に1冊置いておくと、気になった野鳥がいた時に辞書のように使う事が出来ます。

 

 

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