初列風切は手のひら(掌骨)に生えてる羽、次列風切は前腕(尺骨)に生える羽と言っていたけど、その流れだと三列風切は上腕(上膊骨)に生える羽?
だけど違うんでしょ?
三列風切って一体何者なの?
ググってもイマイチ明確に書かれてないんだけど。
以前、風切の見分け方の記事でも似たような事を書いています。
この記事は、そんな疑問に答えます。
結論:三列風切は次列風切の一部。
これが結論です。
えー!意味分かんないんだけど。
そうですよね、ちょっとこれだと乱暴です。
もう少しちゃんと表現すると、「三列風切とは次列風切の一部で、次列風切のうち、内側に生える階段状の風切のこと」を言います。
そして、三列風切の主な役割は「翼と胴体をなめらかにつなぎ、飛行中の空気の乱れを防ぐこと」です。
まとめるとこんな感じです。
・前腕(尺骨)に生えている
・次列風切の一部
・次列風切のうち、内側に生える階段状の風切のこと
・役割は、翼と胴体をなめらかにつなぎ、飛行中の空気の乱れを防ぐこと
冒頭のはね子の疑問にもある通り、ググっても三列風切について明確に書いてある記事って少ないのです。
検索キーワード「三列風切」で上位ページに書いてある内容をいくつか引用掲載します。
上腕骨に接続。厳密な意味でこれを持つ鳥は少ない。
(執筆当時:2020年9月)
上腕骨にあるようですが、「厳密な意味で」の意味は説明されていおらず、分かりません。
次列風切羽と胴体の間を埋める羽。上腕骨に接続している。
(執筆当時:2020年9月)
上腕骨にあると言っています。
三列風切は,次列風切の内側の一部を三列風切という場合や,風切羽と胴体のすき間を補う働きをする
上腕骨についている羽をいう場合があるため,「三列風切」という用語は統一されていません。
用語が統一されておらず、
- 前腕骨に生えている次列風切の内側の一部を三列風切という場合
- 上腕骨に生えている羽を三列風切という場合
があると言っています。
ネット情報はこんな感じで曖昧で判然としません。何しろ「三列風切は上腕に生えてる説」が結構有力です。
でもこれでは納得しないので、鳥類学で権威のある方々が書いた文献を読み込みました。
それで、私なりに導き出したシンプルな答えが「三列風切とは次列風切の一部」です。
でも他の説もあるので、これと戦うつもりはありません。
ただ、言葉の意味にゆらぎがあるととても分かりづらいので、このサイトでは「三列風切とは次列風切の一部」と定義する事とします。
そのように結論付けた根拠を書いていきます。ご興味あれば読み進めて頂ければと思います。
何処に生えているのか
三列風切は前腕の骨、尺骨(しゃっこつ)に生えています。
↓原寸大写真図鑑 羽 増補改訂版(叶内拓哉・高田勝)より引用
風切のうち~中略~尺骨に付着しているものを次列風切という。また、次列風切のうち、内側の数枚は階段状に生えているため、これを三列風切としてほかの次列風切と分けるのが通例である。
尺骨は人間で言うと前腕(肘の下)の骨です。
ここ尺骨は、次列風切が生えている部位です。
次列風切も三列風切も同じ尺骨に生えており、「三列風切とは次列風切の一部」だと言えます。
そして、次列風切との見分け方はというと、後述する役割を果たすため、三列風切は階段状になっている点です。
このあたりはについては、決定版 日本の野鳥 羽根図鑑(笹川昭雄)にも記載があります。
次列風切羽より内側にあり階段状になっている羽をいう
実際にアオバトの羽を並べて説明してみると、三列風切はココです。
三列風切は、隣同士で長さが急激に変わり、確かに階段状になっていることが分かりますね。
因みに、羽図鑑は図鑑の部分だけでなく、ついつい飛ばしがちな冒頭の用語説明も非常に参考になります。羽に興味があって、もしまだ羽図鑑をお持ちでなければ、以下の2冊はお勧めです。
役割は何か
三列風切の主な役割は「翼と胴体をなめらかにつなぎ、飛行中の空気の乱れを防ぐこと」です。
この写真はカルガモの飛翔写真ですが、右側の翼だけ、付け根に生えているはずの三列風切が無いのです。
こうなると、翼の付け根だけ風の流れが乱れてしまって、翼のコントロールが難しくなりそうに思います。
実際にビジュアル博物館 鳥類では、
三列風切羽はいちばん内側にある風切羽で、翼を胴とをなめらかにつなぎ、飛行中に空気の乱流が生じるのを防ぐ
とあります。
また、BIRDER 299号(2011.12)にも同様に、
三列風切には翼と体の間の隙間を埋める役割がある。
と書かれています。
乱流って目に見えないので、ヒトには分かりづらいですが、空を飛ぶ鳥には非常に影響があるのでしょうね。
因みに、ここで引用した、ビジュアル博物館 鳥類は羽や翼の構造について、写真やイラストを多く用いて非常に分かりやすく書かれています。古い図鑑ですが、古本でも手頃な価格で入手しやすいので、鳥類全般について良く知りたい方にお勧めです。
枚数は
枚数ははっきりしません。
でも、どうやらスズメ目では3〜5枚で、3枚の種が多いです。
鳥類標識マニュアル(改訂第 11 版)(山階鳥類研究所)では、
次列風切と三列風切は尺骨に付着~中略~。スズメ目の鳥では一般に 9〜11 枚あり、そのうちの胴体に近い方にある 3~5 枚を、 三列風切という。
とあります。
しかも、種によっては次列風切と三列風切の区別が明確でない種があります。
同じく、鳥類標識マニュアル(改訂第 11 版)(山階鳥類研究所)では、
風切は、初列風切、次列風切および三列風切に分けられるが、種によっては次列風切と三列風切の区別は明確ではない。
とあります。
明確な区別が無い種って、例えば何でしょうね。
このあたりは、非常に多くの鳥を見て触った経験が蓄積された、専門機関のさらなる見解が知りたい所です。
とにかく、三列風切があやふやな存在である理由が、「明確な区別が無い種がある」事にありそうな気がします。
上腕に生えてるのは?
では、google検索上位にかかれている、「上腕骨に生えている羽を三列風切という」説は何なのでしょうか。
上腕骨(=上膊骨(じょうはくこつ))に生える風切の様な羽は、「上膊風切(じょうはくかざきり)」です。
これは存在する種としない種があって、三列風切以上に謎部位です。
以下、またまた鳥類標識マニュアル(改訂第 11 版)(山階鳥類研究所)より引用です。
翼の長い非スズメ目の鳥で上膊骨に風切のような羽が付着している種があり、上膊風切 humerals と呼ぶ。
この上膊風切の存在が、三列風切と交わってさらに事態と混沌とさせている気がします。
続報が掴めたら改めて記事にしますね。
まとめ
という事で、もう一度話をまとめます。
「三列風切とは次列風切の一部で、次列風切のうち、内側に生える階段状の風切のこと」です。
そして、その主な役割は「翼と胴体をなめらかにつなぎ、飛行中の空気の乱れを防ぐこと」です。
間違えられがちな、「上腕骨に生えている風切のような羽は、三列風切では無く、上膊風切」です。
とりあえず、当サイトではこの様な定義で、運用して行きます。
よろしくおねがいします。
羽のバックヤードは手軽なweb羽図鑑になれる様、活動しています。
気に入ったらブックマークと、私のTwitterアカウントもフォローしてもらえると嬉しいです。
質問やご意見がございましたら、ページ下部のコメント欄か、TwitterのDMからお気軽にどうぞ♪
コメント