バードウォッチングを続けていると、鳥の羽を拾うことがあります。
その時に最初に思うのは・・・
あっ羽だ!きれい!すっごく複雑な形!
とか、
ところでこれ、誰の羽?どこの羽?
みたいな事じゃないでしょうか。
私が羽収集を始めた頃はそうでした。
今ではそこそこに羽に詳しくなって、拾ってすぐに分かる羽が増えてきました。
羽を拾ったときの「誰の羽?どこの羽?」という疑問を解決するのは、図鑑が1番です。
それも普通の野鳥図鑑でなく、羽図鑑です。
今回紹介する、原寸大写真図鑑 羽 増補改訂版は、そんな羽図鑑の中でも文句なくトップレベルの図鑑です。
収録内容(目次)
- まえがき
- 目次/本書の使い方
- 用語・記号の解説
- 図解
- 羽図鑑(原寸大写真)
- 索引・参考文献
- コラム・羽を拾ったら
- 著者紹介
羽図鑑(原寸大写真)
掲載281種のうち、268種は各部が揃っているか、部分的に揃っているものが掲載されています。
残りの13種は1枚もしくは数枚しかいないものが掲載されています。
以下に、掲載の羽図鑑を目単位まで記しますね。
- キジ目
- カモ目
- カイツブリ目
- ハト目
- アビ目
- ミズナギドリ目
- カツオドリ目
- ペリカン目
- ツル目
- カッコウ目
- ヨタカ目
- アマツバメ目
- チドリ目
- タカ目
- フクロウ目
- サイチョウ目
- ブッポウソウ目
- キツツキ目
- ハヤブサ目
- 外来種(6種)
- その他の鳥(13種、一部のみ)
掲載種については文一総合出版のHPでご確認ください。
https://www.bun-ichi.co.jp/Portals/0/pdf/hane_zohokaitei_list.pdf
函入り、A4サイズ。オールカラー、全368ページ。文一総合出版。
著者「叶内拓哉」のプロフィール
写真家。9年間造園業に従事し、その後野鳥写真家として独立。1946年東京都生まれ
著者「高田勝」のプロフィール
子どものころから鳥をはじめとする自然が好きで、1972年、東京から北海道に移り住む。1945年愛知県生まれ。2013年没
書籍フォーマット
現在は紙の本だけで、電子書籍の出版はされていません。
「原寸大」と銘を打っていることから、掲載寸法が端末に依存してしまう電子書籍は今後も発刊されないのかなと思います。
ブックレビュー
それでは、軽い書評をしながら、ブックレビューしますね。
281種の日本の野鳥の羽を掲載
本書は281種もの野鳥の羽が掲載。
いわゆる普通種はだいたいカバーしていると思います。
意外にも、ヤツガシラやニシオジロビタキ、ヤマショウビンなどのメジャーだけどなかなかお目にかかれないような「珍鳥」もしっかり掲載されているのが素晴らしいです。
拾いやすい普通種はもとより、実際に拾う機会が無いような珍鳥でも、羽単体でじっくり観察する事ができるのが嬉しいポイントです。
図鑑の上に羽を置くだけでで識別できる
しかも掲載されている羽はどれも原寸大の写真。
この、原寸大の写真というのが重要で、図鑑の上に羽を置くだけで羽が識別できてしまうというのが、本書の最大の利点かと思います。
羽図鑑以外のコンテンツも充実
見逃しがちな、羽図鑑(原寸大写真)以外のコンテンツも充実しています。
「鳥の羽の名称」と「翼の各部の名称」では、風切や雨覆が体のどの部分に該当するのかを図解写真付きで説明されているだけでなく、風切の順番の数え方やその理由なども細かく解説されています。
コラム「羽を拾ったら」では、羽を拾ったときの持って帰り方や洗浄、収納方法が紹介されています。
実は当サイトで人気のこの記事、このコラムをかなり参考にしています。
初版との違い
初版とあまり変わっていないようにも思えますが、増補改訂版と言われるだけあり、実は全く別ものとなっています。
掲載種が増強
まず掲載種が増えています。初版から29種追加して281種に。
掲載種については文一総合出版のHPでご確認ください。
https://www.bun-ichi.co.jp/Portals/0/pdf/hane_zohokaitei_list.pdf
実はシマエナガやアカウソなどの亜種も追加になっていたりして、亜種単位ならもっと追加になっています。
掲載写真を総入れ替え
全写真がアナログフィルムからデジタル写真にすべて入れ変わっています。
これって、スタジオで撮影していることを考えると、とてつもない労力がかかること思います。
共著の体裁を保っていますが、増補改訂版の制作時には高田さんは既に故人となっていて、実際に撮影をされたのは叶内さんとその奥様との事です。
281種をイチから撮り直すというのは、筆者の増補改訂版にかける情熱というか、執念すら感じさせます。
おかげで写真はより鮮明で、実物に近い色合いになったと思います。
このあたりのエピソードは、雑誌BIRDER 2019年2月号に詳しく書かれています。
同じ種でも掲載部位や個体が違う
見逃されがちな事ですが、全写真撮り直した事によって掲載部位が違っていたり、個体が変わっていたりします。
絶版ですので手に入れるなら中古のみですが、割と流通しています。
原寸大写真図鑑羽の購入エピソード
実は私が羽に急速に詳しくなったと感じたのは、この原寸大写真図鑑 羽 増補改訂版を買ってからです。
それ以前の私は羽を拾ったら、あれかなこれかなと想像を働かせて予想し、ネットで「キジバト、羽」などと入力して検索していました。
このやり方は、的中すればいいのですが、ハズれれば当然わかりませんし、ヒントも貰えません。
また、ネット上の羽情報は残念ながら乏しくて、情報ソースとしては量的に貧弱です。
(当サイトはその貧弱な情報量を少しでも補強するように頑張ってます!笑)
当時から本書の初版である、原寸大写真図鑑 羽が刊行されていましたが、おいそれと買う気にはなれない高価な本。
買うのに尻込みしていたらいつの間にか絶版になってました。
専門図鑑あるあるです^^;
仕方がないので、初版を参考図書として所蔵している図書館まで、羽を持っていって調べた事があります。
この図鑑で調べると、種不明だった羽の種名が次々と明らかになっていき、とにかく感動したのを覚えています。
図書館の机で羽を広げるのは気が引けましたが^^;
このレベルの本はたいてい参考図書扱いで館外持出し禁止になっていて、借りることができません。私が通った図書館もそうでした。
羽を調べに都度図書館に行くには時間がかかりますし、調べられるのは開館時間に限られてしまいます。
絶版だけど中古でも良いから手に入れて手元に置きたいとな思った矢先、増補改訂版が刊行されるという噂を聞き、待ちに待って購入した次第です。
増補改訂版は初版よりも更に2000円程値上がりしました。
本としては確かに高い部類ですが、同じ野鳥趣味に関するカメラの望遠レンズ(10万円くらいから、ハイエンドだと100万円オーバーまで!)なんかと比べれば、端数みたいなものかと思います。
これを持っていると羽を拾ったら、家に帰ったらすぐに調べられます。
これは本当に強力なツールを手に入れたと思いましたね。もういちいち図書館に行かなくて良いんですから。
今朝、仕事場で拾った羽。
一様に濃いグレーで、直ぐに種は分からず。後でじっくり調べよ〜。ひとつ楽しみが増えました☺️#林業 pic.twitter.com/uLxxpnoj5i
— 今泉ゆうじ|木こり/SKG羽のバックヤード/イマジサwebログ (@SkgFeather) January 20, 2021
この図鑑を購入する相乗効果として、新しい世界、つまり「羽の世界」に入り込んだという不思議な気持ちになりました。
高価な図鑑が函入で本棚を飾っているだけで満足感が高まりますし、とにかく「羽をやるぞっ!」と気持ちになりました。
そして、羽をやりだし、野鳥を見る視線が変わりました。
鳥の羽を集める愉しみについて考えてみました
・同定する愉しみ
→これ、ムクドリの羽だ!
・知る愉しみ
→羽の仕組や部位、模様が分かるようになる
・野鳥を見る目が変わる
→尾羽の先端が白い。ムクドリだ!羽集めは羽だけを見る遊びではなく、鳥見をレベルアップさせる素敵な遊びです pic.twitter.com/qDsSqJjnI6
— 今泉ゆうじ|木こり/SKG羽のバックヤード/イマジサwebログ (@SkgFeather) August 15, 2020
とにかく良いことづくし。
そんな変化を与えてくれる図鑑です。
価格は決して安くないですが、道具としての価値を考えると全然高くないと思います。
何よりも、この図鑑を手にすると、羽を手がかりとして鳥の世界が無限に広がって行きます。
まとめ
これ以外にも羽図鑑はいくつか出版されていますが、現在(2021年4月)、原寸大写真なのはこの1冊だけ。
(恐らく今後も出版されないのでは・・・?)
繰り返しになりますが、は281種という圧倒的ボリュームに加え、羽を図鑑の上に置くだけで識別できます。
野鳥が好きで、特に羽に興味があるなら本当にお勧めです。
羽の識別の道具としては最も優れていますので。
手元に置いておけば、いつでも羽を調べる事ができ、人生趣味の相棒になります。
この図鑑を手にして、1人でも多くの羽ファンが増えることを切に願っております。
本書を使った羽の識別の仕方については、こちらの記事に書きましたので御覧ください。
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