羽に興味はあるけど、ぶっちゃけ良く分からない。そんな方に向けたシリーズ、「羽の見分け講座ファーストステップ」
第2回目は、種を同定する前に知っておきたい、部位の同定方法(切り分け方法)です。
イントロダクション
冒頭の写真の様に、羽を拾った時に真っ先に頭に浮かぶのは、
わっ羽だ!誰の羽だろう?タカ?キジバト?ソリハシセイタカシギ??
みたいな感じで、落とし主の種の事が気になるのではないでしょうか。
その気持ち、すっごく分かります。綺麗な羽が一体誰のものなのか?いち早く知りたくなりますよね。
ですが、その前に分かって欲しい事があります。その羽が体の何処から抜けたのか?です。
せっかく良い羽図鑑を持っていたとしても、下尾筒(かびとう(→お尻のしたの羽))を片手に、図鑑の風切(かざきり)を参照しても、同定には程遠くなってしまいます。
まずは羽をよく観察して、大体の部位を見分けた上で羽図鑑を開きたいものです。
鳥の羽は身体中に生えていますよね。実はこんなに細かく分類されているのです。
こんな中から部位を同定するなんて無理じゃなーい。
はい。私もそう思います。
羽はテンション上がるものだけ同定すればいい
ですので、私はこう考えています。
- 自分がテンションの上がる羽だけ拾って同定したら良い。
- ふわふわのよくわからない羽なんてそのうち分かれば良い。
アンタ案外思い切り良いのね。
では、「テンションの上がる羽」とはなんでしょうか?
一般的に、拾って嬉しい羽はここ。
風切と尾羽だと思います。模様が多彩で形がしっかりしていますし、その種のシンボル的な羽になっているものも多いかと思います。(例:オナガの尾羽、カモ類の風切(翼鏡)、ブッポウソウの風切など)
わたしはサンコウチョウの尾羽が欲しいわ!
風切や尾羽は、資料になっている事が多く、種を同定する為の情報も多いのです。したがって、同定する楽しみも割と簡単に満たされます。
逆にお腹や腰、背中に生えているフワフワした羽なんかは、世に出回っている情報が少なく、同定するには苦労します。ですので、ここでは思い切って割愛しちゃいます。(それはそれで楽しいのですが、ここはファーストステップなので割愛!笑)
面倒な事は嫌いよ!
風切か、尾羽か、それ以外かの見分け方
では拾った羽が、風切か、尾羽か、それ以外かはどうやって見分けたら良いでしょうか。ミクロな視点で細かく切り分けていく方法はありますが、それはあまりに専門的で初心者にはとっつきにくいです。ここでは「だいたい分かる事」を目的に、感覚的な視点から説明していきます。
そうよ。だいたい分かれば良いのよ。男はなんだって細かく考えるから面倒くさいわ。
風切と尾羽は以下の様な共通した特徴があります。
- 羽軸(うじく)が固くしっかりとして、長い
- 羽弁(うべん)がしっかりとして、一枚の面になっている
※羽軸と羽弁について → 【初心者向け】最低限の・・・羽の構造と呼び名
どちらも「しっかり」しているといのがキーワードです。風を操る為の大切な羽なので団扇の様にしなやかでありつつも、しっかりとしているのです。
これに対して、それ以外の羽というのはあまりしっかりしていません。羽軸は柔らかくて頼りない。羽弁がふわふわでまとまりがない。全体的になよなよしている印象なのが、「それ以外の羽」です。
風切と尾羽の見分け方
風切と尾羽は「しっかり」しているという事で、目星がつきました。では、どうやってこの2者を見分けるのでしょうか。実は、これは意外と簡単なのです。
カケスの羽を側面から見てみましょう。
側面から見た時、カーブの仕方が違うのが分かりますか?
風切は全体的にカーブしているのに対し、尾羽は根元のあたりがカクッと曲がっている以外は真っ直ぐなのです。
なるほど、風切と尾羽の見分けって意外と簡単じゃない!
分かって頂けたでしょうか?もし手元に羽をお持ちでしたら、是非見分けてみてください。
風切か?尾羽か?それ以外か?
野鳥の羽でなくても、共同募金の赤い羽や、ダウンジャケットからはみ出した羽、羽箒の羽など、意外と身近に羽はあるものです。身近なものからレッツ見分け!です。
羽のバックヤードは手軽なweb羽図鑑になれる様、日々活動しています。
参考文献
- 鳥類学、フランク・B・ギル、新樹社
- 原寸大写真図鑑 羽 増補改訂版、叶内拓哉・高田勝、文一総合出版
- 野鳥の羽ハンドブック、高田勝・叶内拓哉、文一総合出版
- BIRDER 289号(2011.2)鳥の形学(P.38)、翼の形と飛び方、文一総合出版
- BIRDER 299号(2011.12)羽の落とし鳥を探せ、特集、文一総合出版
- BIRDER 385号(2019.2)羽毛は語る、特集、文一総合出版
- 動物遺物学の世界にようこそ!、邑井良守・藤井幹・川上和人、里の生き物研究会
- 鳥類標識マニュアル(改訂第 11 版)、山階鳥類研究所 鳥類標識センター
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