羽を集めていると、良くこんな事を質問されます。
バードウォッチングをしていて、羽を拾ったわ。
拾ったは良いけど、これって一体何の羽?拾った羽の落とし主がめっちゃ気になる。
前に詳しい人に聞いたら、簡単に教えてくれたけど、一体どうやったら羽から鳥の種類が分かるようになるの?
こんなバードウォッチャーの疑問に答えます。
▶ 本記事のポイント
■ 追加効果として、バードウォッチングのスキルが上がります。
私はバードウォッチングを初めて約4年。野鳥の羽コレクション歴が3年です。どちらも経験値としては、初級をやっと抜け出し、中級に足がかかった頃かなという感じです。
それでも、コレクションの野鳥の羽は300個体分以上あります。その内の250個体位は種類を識別しました。
羽の識別を初めた当初は、正直言って全然分からなかったのですが、収集と識別をひたすら繰り返して、今ではマイフィールドにいる鳥の羽だったら、殆どの種が分かる自信が付きました。
今回は、そんな収集→識別をひたすら繰り返して培った、私のとっておきの野鳥の羽の識別方法を、渾身の力を込めて、とてもわかり易く解説しようと思います。
力を込めすぎたあまり、少し長くなってしまいました。すいません。
でも、野鳥の写真から種類を識別する様な本(図鑑)やwebサイトは沢山ありますが、羽から野鳥の種類を識別する方法論を説いたものは殆ど無いので、ここで説明する内容は結構レアな情報だと思います。
それと、追加効果なんですけど、バードウォッチングをやっている人の中で、
趣味でバードウォッチングをしているけど、近県で見られる鳥は見尽くしてしまったわ。最近はなんだか退屈気味。
とか、
ぶっちゃけ、最近は野鳥がマンネリ気味。前は超可愛く見えたゴイサギなのに、ここの所、イマイチ萌えないのよね。
みたいな人もいると思います。
そんな人にも羽の識別はすごくおすすめです。羽を知ると野鳥を見る目が変わるので、またバードウォッチングが楽しくなりますよ。
もちろん、マンネリじゃない人なら、もっと楽しくなります!(笑)
羽の識別を体系的に勉強されたい方には、羽識別マニュアルがおすすめです。この本については、こちらのページで解説しているので、よかったらご覧になってください。
ではでは、少し長いですが、お付き合い下さい。
はじめに
はじめにお断りしておかないといけないのですが、羽ってすごく難しいんです。この記事を読んだら、どんな羽でも直ぐに分かる様になるという事は、はっきり言ってありません。
ごめんなさい。
バードウォッチャーなら分かると思いますが、例えて言うと、バードウォッチングを始めたばかりの頃、冬にカモの集まる池や海に行き、自分の知らないカモが多すぎて、「ああ、これを分かるようになるのは無理。」と思った事あるんじゃないでしょうか。
若しくは、初めてシギチを見に行った干潟でもこんな事がありますよね。(私は未だにシギチではこの状態です(笑))
でも今ならカモの名前、結構分かりますよね。それって、繰り返しフィールドに行って、カモを見て識別してきたからだと思います。
羽も同じです。
初めは何も分からないと思います。ヒヨドリの羽を手にして、「スズメかなー?」なんて平気で言うと思います。でもそれが普通です。
身近な鳥の羽を拾う→識別の繰り返しをする事によって、羽を見る目が鍛えられていきます。
今回説明する識別方法とは、本のコラムに書いてあるような、「真っ黒で、羽軸が固く、ヘラのような形をしていたら、カワウの尾羽だ。」みたいな、ある特定の種に絞った識別ポイントのまとめ話ではありません。
日本に野鳥は633種います。その羽は小さいスズメで2000〜3000枚。大きなハクチョウで25000枚あると言われています。そして、身体の部位によって色や形は様々です。どの鳥にでも大体9〜10枚の初列風切を例に取ってみても、翼の内側と外側では全然違う形をしています。野鳥の種数と羽の部位をかけ合わせて、全ての羽の特徴を識別ポイントにまとめるのはどうやったって不可能だと思います。
ですので、ここで解説するのは、「羽の識別ポイントまとめ」では無く、「どうやったら羽が識別出来るようになるか」です。スキルアップの方法です。
言い換えると、羽の識別力を上げるトレーニング法と言ってもいいと思います。
頑張っていきましょう!
羽の識別に向いている人
本題に入る前に、どんな人が羽の識別に向いているのか、私なりに考えてみました。
■ 調べ事が好きな人
■ 発見が好きな人
■ 観察するのが好きな人
この条件が当てはまる人は、愉しみながら羽の識別が出来て、すごく伸びるんじゃないかなと思います。
どうしてかと言うと、羽の識別はまず野鳥が分からないといけません。種を知っているだけでは無くて、いつ、どの様な環境に、どの様な種類の野鳥がいるのかを、ある程度分かってないといけません(その理由は後述します)。
そして、羽は調べないと分かりません。直感で「ツグミかも!」と思っても、羽の世界は誰も答えを持っていません。答えを探すのは自分自身なのです。調べて答えを発見するのが好きじゃないと、ちょっと難しいかなと思います。
(Twitterで、「#教えて羽の人」を付けてつぶやくと、教えてもらえるかも知れませんが、それは調べたとは言いませんよね。)
更には、そもそも羽を見つけないとスタートしませんので、フィールドである程度の観察力があって、なおかつ落ちている羽を発見出来る。そして羽を良く観察するのが好きな人。
そんな人が、バードウォッチングに加えて、羽識別を趣味にするのはぴったりだと思います。
全てが当てはまっている必要は全然ありません。どれかが当てはまっていれば、脈アリだと思います。やっていくうちにコツが掴めると思います。
何よりも、野鳥が好きで、羽に興味があれば、愉しみながらやれると思います。
次に書いた方法を試して、是非がんばって頂ければと思います。
拾った羽を識別する方法(手順)
長い前置きが終わり、ようやくここまで来ました・・・
それでは、私が実践している、拾った羽を識別する方法を紹介していきますね。
▶羽の識別法
2. 野鳥の種類をあたり付け
3. 本気で調べる
4. 普通種で特訓(羽の識別力アップ法)
以外にシンプルじゃないですか?
具体的に説明していきます。
部位をなんとなく識別
野鳥の種類云々を言う前に、その羽はどこに生えていたものでしょうか?
言うまでも無く、野鳥は全身羽だらけです。同じ種でも、その羽の形や模様は、生えている場所によって様々です。種類を言い当てる前に、どこの部位に生えていたものなのか、なんとなく識別しましょう。
とは言え、こんな膨大な名称の中から部位を言い当てるのは無理です。私にもぶっちゃけ良く分からない謎部位は山ほどあります。
羽の識別を初めたばかりの方には、まずは風切と尾羽、そしてそれ以外が識別できれば良いと思います。
風切か、尾羽か、それ以外かの識別方法が分からない方はこちらの記事を参考ににしてください。
それ以外と判断した羽を、さらに詳しい部位まで識別するのは、はっきり言ってめちゃくちゃ難しくて、初心者向けにはおすすめしません。ですので、種類を識別するのも諦めます。
それ以外と判断した羽は、レベルが上がった時の為に、とりあえず保管して起きましょう。続けていればいつか分かる日が来ます。(笑)
羽の保管方法については、この記事を参考にしてください。
野鳥の種類をあたり付け
部位が何となく分かったら、どんな種類の鳥か、あたり付けをしましょう。
色と模様
どうやってあたりを付けるかというと、まずは色と模様です。
色は黒ですか?茶ですか?
単色ですか、それとも2色?
模様は?斑点がある?
特徴を2、3挙げましょう。
大きさ(長さ)
長さはどれくらいでしょうか?
野鳥図鑑には大抵、その種の全長が「L = 33cm」なんて感じで書いてあります。全長を超える様な羽は無いですから、あたり付けの目安になります。
風切か尾羽でしたら、大抵全長の1/4〜1/2位の長さに収まるかと思います。(あくまで経験則です。)
L = 21cmのハクセキレイに、14cmの尾羽はちょっと違うかなーとなります。
L = 33cmのキジバトだったら、14cmの尾羽はあり得るなと言った感じです。
拾った場所と季節
拾ったのはどこでしょうか?もし、場所が市街地だとスズメ、ムクドリ、カラス、キジバトなんかが頭に浮かびますね。
浜辺だったら、自ずと水辺の鳥、特に海にいる鳥。ウミネコや、トビ、スズガモなどといった感じですが、拾ったのが真夏でしたら、冬鳥のスズガモはちょっと違うだろうとなります。
こんな感じで、色と模様、大きさ(長さ)、拾った場所と季節から、「なんとなくキジバトっぽい」とあたりをつけるんです。
本気で調べる
あたり付けした鳥の種類が当たっているかどうかを本気で調べるには、図鑑が一番です。
羽図鑑
羽図鑑が手元にあれば、これを見ながら羽と図鑑を見比べながら識別します。ドンピシャで当たっていれば終了ですし、ハズレでも近縁種をパラパラと見てみたりして、手がかりを探します。
それでもダメなら、その羽図鑑に加えて野鳥図鑑も見ながら、第2候補、第3候補を探しましょう。この時、羽を拾ったフィールドにはどんな鳥がいるか、想像を膨らませながらやるのが重要です。
羽図鑑には様々な種の羽が乗っているので、全くあたり付けをせず、総当りで識別しようとすると、めちゃくちゃ時間がかかって疲弊します。はっきり言ってかなりしんどいです。あたり付けはこの為の準備だったのです。
因みに、私が主力で識別に使っている羽図鑑3冊を紹介しておきます。
一番おすすめなのは原寸大写真図鑑 羽 増補改訂版です。
掲載種数281種と圧倒的に多いのと、原寸大なので、羽を図鑑の上に置くだけで識別が出来ます。ちょっと(かなり?)高いですが、もし野鳥の羽に興味があって、今少し財布に余裕があるなという方は、迷わず原寸大写真図鑑 羽 増補改訂版を手に入れちゃった方がいいと思います。
→改定前の初版であれば、図鑑.jpにラインナップがあるので、サブスクという手もあります。
原寸大写真図鑑 羽 増補改訂版はちょっと高いという方には、野鳥の羽ハンドブックの方が買いやすいかと思います。
掲載種を身近に見られる77種に厳選しているので、初心者向けとしては、検索性が高いです。
決定版日本の野鳥羽根図鑑も掲載数は300種と多く参考になります。
羽がイラストで書かれている事から、初見の羽だと判然としない場合があり、少し玄人向きな図鑑ですが、原寸大写真図鑑 羽 増補改訂版より安くて、手が出しやすいです。
普通の野鳥図鑑
尾羽や風切の識別でしたら、普通の野鳥図鑑でも分かる事があります。この場合はイラスト図鑑より、写真図鑑が良いですね。イラストの場合は羽の詳細な模様が省かれている事があります。
写真図鑑で、特に飛翔中だとか、翼や尾羽を広げた写真が多い物だと、非常に頼りになります。
♪鳥くんの比べて識別!野鳥図鑑670 第3版は写真数が多くて、想像以上に羽の識別に使えます。
雌雄識別の為に尾羽が比較されていたり、類似種比較で飛翔写真が並んでいたりするので、尾羽と風切の識別にかなり活用できます。
(もちろん、本来の目的である、生体の識別にも抜群に使えます!)
山渓ハンディ図鑑7 新版日本の野鳥は日本で普通に見られる野鳥が豊富な写真で掲載されているので、こちらも羽図鑑が無い場合は参考に出来ます。もし野鳥の図鑑を1つもお持ちでなければ、最初の一冊としてもおすすめします。
featherbase
featherbaseは世界最大の羽のデータベースです。誰でも無料で使えるので、利用しない手は無いです。
▶featherbaseの使い方(超簡易版)
- 上記にアクセスしたら、まず言語設定を日本語にしましょう。
- 一番左にある「collection」をクリックし、更に「alfabetical」を選択します。
- 「羽根コレクション」が五十音順に並ぶので、そこから目当ての羽を探して下さい。
- 世界中の鳥の種名が並ぶので、目で探すのは結構辛いです。検索にはブラウザの検索「control + F」が便利です。
- 写真下部の「羽根を計測をクリック」すると、計測モードになります。羽写真を2点クリックすると、その間の長さが表示されます。
但し、対象データが全世界と膨大なので、かなりピンポイントであたりが付いて無いと、あたりを探し出すのは至難の業です。
その他、ネットでの検索ノウハウ
あたりが付いてる種があれば、その種名をネットで検索してみると良いです。
googleで「種名、風切」とか、「種名、尾羽」、はたまた「種名、羽標本」なんて入れると、結構ネットに上げてくれている人がいるので、案外分かったりします。
featherbaseもそうなのですが、あたりが付いていないとネット検索は厳しいですね。あたりがついてなくても、気合があれば総当りで調べられる図鑑はやっぱり優秀だなと思います。
あと、図鑑の方がネットで調べるのに比べて、断然早く調べられます。図鑑を持っているのと、持っていないのとでは、レベルアップのスピードが全然違うと思います。
羽図鑑は図書館にも置いてある所が多いですが、図書館は借りるにしても、見に行くにしても時間がかかってしまいますね。
図鑑は手元にある方が、検索スピードが格段に違います。図書館は試し読みで利用するのが良いかと思います。
羽収集・羽識別をやるなら、羽図鑑は是非手に入れて下さい。
普通種で特訓(羽の識別力アップ法)
いきなり難しい羽に挑戦するのはハードルが高いです。身近にいる鳥(=拾いやすい鳥)の羽を沢山拾って、識別力をアップしましょう。
身近な所で、落ちてる羽は結構あります。わざわざバードウォッチングに出掛けなくても、通勤・通学途中や、お昼休みの移動中などに、羽を拾うことは可能です。
スズメ、ムクドリ、ハクセキレイ、ヒヨドリ、カラス、ハトなんかがとても拾いやすいのでおすすめです。
▶当サイトの関連羽標本
ねぐらの下で拾う
スズメ、ムクドリ、ハクセキレイは、駅前やショッピングセンターなど、夜でも人が多く集まる場所の街路樹をねぐらにして集まります。その下には糞に混じって羽が落ちていることがあります。
通勤、通学の途中に羽を拾う事が出来るので、簡単に出来ます。
道端や公園で拾う
ヒヨドリ、カラス、ハトなどは、羽が大きくて目立つので、道端に突然落ちていることが良くあります。道のど真ん中ではありません。道の端っこで特に街路樹や生け垣があるような所で、舗装された所が見つけやすくて狙い目です。
公園にも落ちています。この場合も木の近くが多いですね。特に吹き溜まりになるような公園の端っこです。草や土の上だとちょっと分かりづらいので、コンクリートなんかで舗装されている所があると、更に気づきやすいです。
身近なハトには、キジバトとドバトがいます。羽からの見分けは案外簡単なので、以下の記事を参考にしてください。
カラスはハシブトガラスとハシボソガラスがいますが、両者を見分けるのは結構難しいので、初めの内は単にカラスとしておきましょう。
時期は夏がチャンス
鳥は一般に、繁殖が終わった夏から秋にかけて羽が抜け替わります。これを換羽といいます。抜けた羽は地面(それか水面)に落ちるのですから、この時期の鳥がいる場所に行けば、羽を拾う確立が格段に高まります。
特にねぐら下なんかは、かなりの高確率で拾えます。
それと、上記で言った種に限らないですが、池の周りだとカルガモが、砂浜だったらウミネコやトビの羽が高確率で拾えます。
どうしても分からない場合
羽図鑑を見回しても、どうしても分からない羽ってあります。そういった場合は無理に探そうとせず、まずは丁寧に保管しておくのが良いと思います。徐々にレベルが上がっていくと、
そういえばあの時分からなかった、あの羽って、もしかしてツグミの尾羽だったんじゃないの!
と閃く時が来ます。知識が付いてくると、必ずそういう時は来ます。
その日の為に大切に、分からない羽はとっておきましょう。
▶羽の保管方法はこちらを参考に
まとめ
さて、長々と羽の識別法を書いていきましたが、いかがだったでしょうか。
私がこれまでに通ってきた道を振り返りながら、3年前の初心者だった自分に向けてアドバイスするつもりで書きました(笑)。
繰り返しになりますが、ポイントは以下です。
▶羽の識別法
2. 野鳥の種類をあたり付け
3. 本気で調べる
4. 普通種で特訓(羽の識別力アップ法)
焦らず、楽しくやってもらえたらと思います。
楽しくやっているうちに、だんだんと羽が分かるようになります。
羽が分かるようになると、鳥を見る目もだんだん変わってきます。
今まで完全スルーしていたムクドリを、じっくり良く見るようになります。
「ムクドリの尾羽って先端が白いんだなー。次列風切の縁は白いんだなー。覚えておこう。」と、今まで見もしなかった視点で鳥を見るようになります。
こうなると、一層バードウォッチングが楽しくなりますね。
外に出たら、羽を拾う愉しみも増えますしね!
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございます。本当に嬉しいです。
この記事を通して、一人でも羽が好きになってくれる人が増えたら更に嬉しいです。
羽の識別を本格的に勉強されたい方には、羽識別マニュアルがおすすめです。この本については、こちらのページで解説しているので、よかったらご覧になってください。
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