バードウォッチングをやっていると、たまに鳥の羽を拾うことがありますよね。
すっごく綺麗なアオゲラの羽を拾ったのだけど、どうしたら良いの?
記念に保管したいんだけど、汚れや、バイ菌、虫なんかが気になるわ。
こんなバードウォッチャーの疑問に答えます。
▶ 本記事の内容
■ 羽の保管方法色々(チャック付きポリ袋、羽スタンド、ファイリング、標本など)
私は野鳥の羽コレクション歴が3年を経過し、保管中の羽は300個体分以上あります。その内の100個体位は羽標本にして保管しています。
バードウォッチングの始め方や、上手な野鳥写真の撮り方を解説した書籍やwebサイトはありますが、羽の保管方法を扱った情報は世の中に殆どありません。
今回は、私がコレクションを収集→標本化する事で培った、とっておきの野鳥の羽の保管方法をとてもわかり易く解説しようと思います。
ちなみに、3年前に私が初めて拾ったカラスの羽は、このやり方で今でもとても綺麗な状態で保管できていますよ。
羽の保管方法については、後述する標本の作り方の本などに記載されていますが、具体的に使用する小道具の商品名までは良く分かりません。
「紙に貼ってファイルする」って書いてあるけど、一体どんな紙に貼れば良いの?
そもそも何で貼れば良いの?
こんな疑問が生まれるのも無理がありません。
この記事では拾った羽を保管する為の方法論だけでなく、必要になる小道具の商品名レベルまで具体的に載せ、読者が迷わずに作業出来るよう心がけました。
3年間の羽管理で蓄えたノウハウの集大成です。渾身の力で書きましたので、はっきり言って長いです(笑)。どうかお付き合い下さい。
羽の洗い方
羽を拾ったら、兎にも角にも洗いましょう。
えー!羽って洗って大丈夫なの?
ボロボロになったりしない?
なんて心配する方がいるかも知れません。
でも、野鳥は雨でも飛び回ったり、水浴びしたり、種によっては水中を泳いだりしますよね。羽は水に濡れたってなんの問題も無いのです。だから洗っても問題ありません。
むしろ洗うことによって、汚れが落ちてとても綺麗になります。枯れ草の破片や土埃が付いて、薄汚れていた羽も生きていた頃の様に綺麗になるのです。
また、洗うことによって、以下のような効果も期待できます。
・余計なタンパク質やゴミを落とし、保管中に虫がつくのを防止する
・目に見えないような小さい虫(ダニなど)を落とす
では、早速羽を洗ってみましょう。洗うのは別に難しくありませんよ。
洗面器にお湯を張り、洗剤でじゃぶじゃぶとするだけです。お湯は給湯器で40℃前後の温度。洗剤は食器洗剤を使います。シャンプーでも大丈夫です。
洗面器に洗剤を入れ、その後にお湯を入れて泡を立てます。泡が立ったら羽を入れて優しく洗います。あんまりゴシゴシやると羽枝(うし)という毛のような部分が抜けてしまうので、あくまで優しくですよ。
汚れが酷い場合はいきなり洗剤を入れずに、最初はお湯だけで大まかな汚れを落とすのがコツです。
汚れが落ちたら、水で良くゆすいでしっかり洗剤を落としてください。
羽の乾かし方
洗った羽は、キッチンペーパーやタオルの上に置いて、軽く水気を取ります。
その後はドライヤーで乾かしていきます。冷風でなく温風で、風量はMAXです。
えっ、温風で傷んだりしないの?
心配無用です。ドライヤーの温風で痛むということはありません。
私の経験では、むしろドライヤーの温風で乾かした方が、自然乾燥よりもふわふわに仕上がる気がします。
ドライヤーで乾かすのは完全乾燥よりも、半乾き位の状態までが良いです。
ここまでやると、羽弁(うべん)がバラバラになっていると思いますので、それを指を使って形を整えていきます。鳥になった気分で羽繕いをしていくと、バラバラになった羽弁は一枚の板の様に元通りにくっついていきます。
目には見えませんが、羽弁を構成する羽枝(うし)には鉤爪が付いていて、マジックテープの様に隣の羽枝にくっつくのです。羽ってすごいですね!
ちなみに、形を整える作業を飛ばして自然乾燥させると、羽に変な癖がついてしまうので、綺麗な羽にしたければ、この作業は絶対飛ばさないように。
形が整ったら1日ほど自然乾燥させます。
洗浄→乾燥までのまとめ
ここまでの流れを簡単にまとめると、以下になります。
2.良くゆすぐ
3.ドライヤーで半乾きさせる(ここで止めると癖がつくので注意!)
4.完全に乾く前に指で形を整える
5.一日程、自然乾燥させる
羽の保管方法
さて、綺麗に整った羽は、どうやって保管しましょうか?
私が実践しているおすすめの保管方法を紹介していきます。
とりあえずこの状態で放置
一番楽な方法は、机の上や棚にこのまま放置します。
雑に思えるかもしれませんが、綺麗な羽は立派なインテリアとしても機能します。
私は作業用のデスクの上に、沢山の野鳥の羽を置いています。羽が常に目に入っていることで、癒やし効果がありますし、アイデアも生まれます。また、羽についてふと疑問に思った時もすぐに調べれます。
「保管方法」としてのコツは、ラベリングをする事です。
羽軸の下の方に紙テープをクルッと巻いて貼り、そこに羽の情報を裏表に記載します。私が記載している項目は以下です。
・部位(P9だったら、初列風切の9番目という意味です。)
・採取年月日
・採取場所
分からない情報は割愛して構いません。
紙テープには、タミヤのマスキングテープを使っています。テープの薄さと、低粘着力がラベル用としてはちょうど良いです。コスパも良いです。1個買えば2〜3年は問題なく使えます。
手先が器用で小さい字を書くのに自信がある方には6mm幅を、自信が無い又は老眼で小さな字が辛い方には10mm幅をおすすめします。6mm幅の方がやはり見栄えは良いですね。
情報記載用には、油性ペンを使っています。あまり大きな字だと主張が強くなって、羽がかっこ悪くなるので、なるべく小さい字で書くようにしています。マッキーケア超極細はとても細くて、小さい字が鮮明に書きやすいです。
羽スタンドで飾る
羽を寝かせているだけだと、ぶっちゃけインテリアとしてはいまいちです。そこで、私は羽スタンドを作りました。
角材にドリルで穴を開けるだけで、立派な羽スタンドができますよ。
やり方は、3cm×3cm×3cmのサイコロ型の木材にドリルで穴を開けます。穴の大きさは種によりますが、各面に2.0mm、2.5mm、3.0mm、3.5mm位の穴を開けておくと、色々な羽に対応でき便利です。
サイコロ木材は東急ハンズで買いました。写真はブナ材の物で1個50円位だったと思います。材質によって雰囲気が変わるので、お店で探してみてください。
ドリルはたまたま持っている電動ドリル(インパクトドライバー)を使っています。穴を開けるのには、電動だったらなんでも良いですが、マキタのインパクトドライバーを1つ持っていると、DIYするのに何かと重宝しますよ。
チャック付きポリ袋で保管
ある程度コレクションの数が増えてくると、机の上に放置という訳には行かなくなって来ると思います。
チャック付きポリ袋は簡単で管理がしやすく、また密封出来るので防虫効果が高いのでおすすめの方法です。私も多くの羽をこのチャック付きポリ袋で保管しています。
この場合も、羽の基本情報を記載するメモをポストイットなんかで残しておく事をお忘れなく。
・部位(P9だったら、初列風切の9番目という意味です。)
・採取年月日
・採取場所
チャック付きポリ袋は100円ショップで色々なサイズが買えます。特大、大、中、小くらいのサイズを持っていると便利です。
私がよく使うサイズを大きい順に書きますね。
・140mm × 200mm
・114mm × 168mm
・98mm × 138mm
わざわざ買いに行けない方にはアマゾンなどでも取り扱いがあります。
ノートに貼る
ノートに羽を貼っておくと、後で探す時に便利ですね。
あの時の羽、どこいったっけ?
という時に、ノートに貼っておくと、パラパラとページをめくって探せるのでとっても便利です。またアルバムの様になるので、コレクションとしての満足感も高いです。
ノートは何でも良いのですが、ちょっと奮発してLIFEのノートなんかに貼ると、テンション上がると思います。
なお、ノートの大きさは一般的なB5(182mm×257mm)サイズだと大抵の羽には小さすぎます。カラスやフクロウの羽なんかだと、簡単にはみ出てしまいます。なので、少し大きいA4(210mm×297mm)サイズがおすすめです。
羽を貼る用のテープは前述のマスキングテープか、紙テープをおすすめします。
見栄えを気にする方は、メンディングテープでも良いですが、貼り直しが効かないので私は使いません。
私は、観察や記事撮影の為に、頻繁に台紙から羽を外すので、貼り直しが効くタイプの紙テープが勝手が良いです。
一番仕上がりが美しいのは接着剤だと思います。私は前述の理由から使いませんが、私よりもずっと羽歴の長い方の情報では、以下の瞬間接着剤がとても良いとの事です。
どれを使うかはお好みで選んで頂いて結構ですが、セロテープは絶対に使ってはいけません。セロテープは劣化が早く、数年で接着剤がベタベタになって羽に付着してしまうからです。
写真はノートでは無いですが、LIFEのレポート用紙に貼った羽です。これをA4サイズのファイルに入れて保管しています。
羽標本を作る
ノートに貼るパターンの派生型で、本サイトで公開している羽標本そのものです。
当サイトの羽標本は、すべてミューズの色上パック・色上質紙(厚口)に羽を貼っています。
B4やA4サイズでは頼りないので、B4(257×364mm)とA3(297×420mm)を使っています。サイズの使い分けは羽の大きさで決めます。ヒヨドリやトラツグミ位のサイズまではB4で収まりますが、それ以上の大きさのアオバトやゴイサギなんかですと、A3を使用しています。
紙の色は「銀鼠(ぎんねず)」という薄いグレーを使っています。白の紙よりも羽の色が良く映えます。
但し、なんでも「銀鼠(ぎんねず)」が良いという訳でも無く、メジロの様に、羽の縁に薄い縁取りが入っているような種の場合は、黒の方が映える事があります。
ともかく、何にでも使える万能選手が「銀鼠(ぎんねず)」です。とりあえずはこれを入手しましょう。
羽を貼る場合は、張り直し可能な紙テープを使用しています。ニチバンの紙粘着テープ12mm×18mが、貼りやすくコスパが良くてとても気に入っています。
タミヤのマスキングテープでも良いですが、色が黄色っぽくて見た目の主張が強いので、最近作っている羽標本はこの紙テープで統一しています。
羽を紙に貼ったら、次は標本ラベルを記載して貼ります。私はこの様なものを自作しています。
私の使っている標本ラベルを無料でダウンロード出来るようにしておきますので、良かったら使って下さい。
“標本ラベル” をダウンロード hyouhon-label.pdf – 326 回のダウンロード – 18 KB
ちなみに標本ラベルは、普通紙よりももっと硬い画用紙(A4サイズ)を使って、ラベルっぽくしています。A4画用紙だったら100円ショップで買えますので、私はそれを使っています。画用紙の他に、ケント紙でも良いと思います。
最後にファイリングです。
B4(257×364mm)やA3(297×420mm)の様な大型サイズのファイルは余り出回っていないので、あまり選択肢はありません。そんな中から、私はリヒトラブの交換式のファイルを使っています。
基本的に紙のサイズに合うファイルだったら何でも良いですが、私がリヒトラブの交換式のファイルを使っている理由は、リング式になっていてポケットが交換式可能だからです。ポケットが外せるとこんな良い事があります。
・標本を誰かに貸し出す時に、ポケットのまま渡せる
(貸し出し時は標本保護の為にクリアファイルに入れたいのですが、
B4やA3サイズのクリアファイルなんてほとんど流通して無いのです。)
増えた羽コレクションをファイルに入れられると、本当に保管が楽ですよ。
参考に、私の羽標本のファイルです。整理されてるって感じで良いでしょう!?(笑)
長期保管の注意点
長期保管の大敵は兎にも角にも防虫です。
虫が付くと、見た目にも気持ち悪いですが、それ以上に大切な羽コレクションが食べられてボロボロになってしまいます。
そんな風にならない為の注意点は2つです。
密封する
チャック付きポリ袋に入れておけば、外部からの虫の侵入が抑えられます。また、目に見えない様な小さな虫(ダニやノミの類)が付着しているのが気になる方は、更に後述する防虫剤も入れておきましょう。
机に置いている様な羽は、常に虫に食べられるリスクがあると心に留めておきましょう。
前述の通り、羽を飾って置くことにも意義があるので、絶対に密閉をしろと言っている訳ではありません。ですが、羽単体で保管する時には必ずチャック付きポリ袋などで密閉するようにしましょう。
防虫剤を使う
ファイリングした羽は密封するのが難しく、虫の侵入が怖いです。
どんなに頑張って掃除しても家には虫が居るものと覚悟して、防虫剤を使いましょう。私は衣服用の防虫剤を使っています。羽に匂いが付かない、無香タイプが良いですね。
防虫剤はファイルのポケットに入れるほか、ファイルを保管している引き出しにも入れる事で、衣類をしまっているタンスと同じ様に防虫ができます。
終わりに
すっごく長くなりましたね。お疲れさまです。
今回は、私が実践している羽の保管方法を順を追って、余すこと無く書きました。
お付き合いいただきありがとうございました。
この記事の内容で、拾った羽の保管方法については十分理解できるようになったと思います。
もし、このような羽の洗浄→保管の方法について、もっと知りたい方がいましたら、以下の本が参考になります。良かったら在庫のある内に買って読んでみてください。
鳥の羽が281種収録されているだけでなく、巻末のコラム欄では、洗浄やファイリングの仕方が記載。
死体を見つけた場合の対応方法が状態別(新鮮、ミイラ化、腐敗)で書かれているのが、素晴らしく(!?)参考になります。
鳥の羽の観察方法の他、足跡やペリット古巣のについても観察ポイントが記載。羽の項では拾った後の洗浄方法や標本の仕方などが書かれています。
羽のデジタル標本の作り方について書いてあるのは、この本ユニークかも知れません。スキャナの選び方まで言及されていて、興味ある方にはとても参考になるかと。
BIRDER誌では、数年に1度羽毛が特集されます。これはその最新版です。
羽を見つけるポイントから、洗浄そして保管までを2ページ見開きで説明。
羽識別のノウハウ、教えます」の項では、部位の識別から特徴のある鳥の羽の見分け方が6ページに渡り紹介されています。
こちらは生物全般の標本の作り方の本。どちらかというと鳥の仮剥製と骨格標本に興味がある人向け。
グロめの内容が淡々と詳しく書かれていて参考になります。
羽の保管についてはコラムで1ページ。その他、植物や魚、貝、哺乳類など幅広く標本について説明されています。
羽収集はかなりニッチな世界で、文献は限られます。
私は、古書も含めて羽関連の本を色々探し出して手に入れましたが、今手に入る本の中で、羽の洗浄と保管方法が書いてあるのは、この4冊くらいだと思います。
興味がありましたら、ぜひ手に入れて下さい。
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