前編では各風切がどこに生えているのかを解説しました。
中編ではいよいよ初列風切と次列風切の見分け方を説明していきますね。
初列風切か次列風切か
初列風切と次列風切の解剖学的な違いは分かって貰えたでしょうか。
しかし、拾った羽がどこに生えていたかどうかは知る由もありません。ここでは風切羽の特徴を見ながら、初列風切か、次列風切かを見分け方を説明していきます。
羽標本から初列風切と次列風切を取り出して、比較をしてみます。どれがどれか、分かりますでしょうか?
全然分からないわ。もう帰っていい?
まあまあそう言わず、答えはこれです。
答えだけ知ったって意味ないわ。見分け方を教えてよ。
そうですね。よく特徴をみてみましょう。
羽弁の段差(欠刻)
羽弁に段差(欠刻という)がある → 初列風切
しかし、初列風切にも段差が無いものがありますから、段差が無いからといって次列風切とは言えませんので要注意です。
とにかく段差があったら初列風切なのね。
先端の形状
羽軸に対して内弁側(*1)に傾く → 初列風切
羽軸に対して大体垂直もしくは外弁(*2)に傾く → 次列風切
*1 内弁:羽弁のうちの内側。カーブしている羽軸の内側。
*2 外弁:内弁の反対側の羽弁。
確かに初列風切は傾いてるわ。
内弁と外弁の幅
外弁の幅が狭く、内弁の幅が広い → 初列風切
外弁と内弁の幅がだいたい同じ → 次列風切
しかし、次列風切でも初列風切のような傾向の種もあるので、この特徴には注意が必要です。
決め手に欠くわね。
羽軸のねじれ
大きい → 初列風切
小さい → 次列風切
羽って捻れてたのね。初めて知ったわ。
初列風切と次列風切の見分けポイントまとめ
- 羽弁に段差(欠刻)がある → 初列風切
- 先端の形状
- 羽軸に対して内弁側に傾く → 初列風切
- 羽軸に対して大体垂直もしくは外弁に傾く → 次列風切
- 内弁と外弁の幅
- 外弁の幅が狭く、内弁の幅が広い → 初列風切
- 外弁と内弁の幅がだいたい同じ → 次列風切
- 羽軸のねじれ
- 大きい → 初列風切
- 小さい → 次列風切
しかし、上記の条件が全てが漏れなく当てはまるという訳ではないので、このあたりの特徴を総合的に踏まえて、初列風切と次列風切を見分けるという事になります。
なんだか首相会見のような歯切れの悪さね。
そうですね。残念ながら全てに一致する条件はありません。是非傾向を掴んで、同定してみてください。間違えて良いのでとにかく場数を踏むのが重要です!
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参考文献
- 鳥類学、フランク・B・ギル、新樹社
- 原寸大写真図鑑 羽 増補改訂版、叶内拓哉・高田勝、文一総合出版
- 野鳥の羽ハンドブック、高田勝・叶内拓哉、文一総合出版
- BIRDER 289号(2011.2)鳥の形学(P.38)、翼の形と飛び方、文一総合出版
- BIRDER 299号(2011.12)羽の落とし鳥を探せ、特集、文一総合出版
- BIRDER 385号(2019.2)羽毛は語る、特集、文一総合出版
- 動物遺物学の世界にようこそ!、邑井良守・藤井幹・川上和人、里の生き物研究会
- 鳥類標識マニュアル(改訂第 11 版)、山階鳥類研究所 鳥類標識センター
- ビジュアル博物館 鳥類、同朋舎
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